⑭ 石を拾う

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2023.12.7更新

⑭ 石を拾う

小山田和正

前回の僕の連載「ちゃんとしたかったのにできなかった」を更新したのが9月末なので、それから丸2ヶ月が経過し、すっかり冬になってしまった。書くことがなかったとも言えるし、書けなかったとも言える。理由はいくらでも見つかるが、とにかく僕は更新をサボってしまった。

いやいや、一体誰に言い訳しているのだ。更新したところで、ほんの数名の方が読んでくれるくらいで、誰にも期待されているわけではない。自分で決めた方針を自分で守れていないことに後ろめたさを感じ、それをサボったと感じているだけの話だ。

随分前、いつも書けないことに悩んでいる僕に、ある方から毎日日記を書いていると自然に書くことが見つかりますよ、と提言を頂いた。そういうものかなぁと思いながらもしばらく経ったが、その言葉も頭の片隅にあったし、理由はそれだけではないけど、前回の「石を置く」で書いたように、9月から毎日日記を書きはじめた。もうすぐ100日になる。

毎日日記を書き続けていると、なんとなくボンヤリと過ごしていた1日でも、案外いろんなことをして、いろんなことに興味を向けている自分に気がつく。1日の終わり、今日を思い出しながら書き出してみると、すいすいと2,000文字は余裕で超える。彼の言う通り、毎日日記を書いていると、長い文章を書く際のネタにもまったく困らない。

と、なるはずだったのだけど、僕の場合、そんな魔法は起こらず、どうやら僕は日記を書き終わったあと、その日のことは、あぶあぶとあぶくになって消えてしまうようなのだ。毎日忘れたい日を過ごしているのかもしれないし、それゆえに今日よりも明日こそはという気持ちが大きいのかもしれない。書き終わった後は脳みそのリセットボタンを押しちゃった感じで空っぽなのだ。

そこで、僕は今、何かイイ感じの原稿を書こうと、この100日ほどの日記を「石を拾う」ように眺めている。一度置いた石を、もう一度拾って、ひとつひとつ積み上げる。置いた石を、もう一度拾う行為の意味を考える。やっとイイ感じになってきた。と、積み上がった石を眺めていたら、すごい速さで鬼がやってきて、その石を足蹴で崩して、あっという間に走り去っていった。その鬼の速さに僕はすっかり感服しました。

もう少しだったのにな。

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小山田和正 linktr.ee
一般社団法人WORKSHOP VO 代表理事
元)東日本大震災津波遺児チャリティtovo 代表
法永寺(青森県五所川原市)住職
FMごしょがわら「こころを調える(毎週月13:05)」