私と生活圏 ⑩「孤独だと感じている人がいたら」

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2024.3.6 更新

⑩「孤独だと感じている人がいたら」

藤林 秀

「最近、自分が孤独だと感じてさ…」

と息子が話し始めました。
孤独、というレベルまで行ってしまうと、ちょっと心配になります。
自分が孤独だと感じている、その内実が知りたくて、会話を続けました。

私「そうなんだ。それは苦しいね…。どうしてそう感じたの?」

息子「漢字検定を受けるために勉強をしているのが1年以上続いているから、漢字検定の勉強をしていないと不安になる。それを評価してもらえていないし、周りの友達は普通に遊んでいるのに、自分だけ勉強するのも、なんか…うん…」

私「(そうか…。ちょっと苦しくなっちゃったのかな…。休めれば回復しそう。でも、孤独だと感じている状況はあまりよろしくないな…。)」

私「そうかー…。勉強を続けて疲れて苦しくなるよね。勉強って楽しいだけじゃないもんね…。」

私「パパは、息子が勉強している所を見ているけど、周りの人は息子のことをどう思っているんだろう?何か息子に対する評価とかはある?」

と聞きました。
そうやら、本人は孤独を感じている。
そして、普段遊ぶ友達がいるのも事実です。
なんだか矛盾している感じがしました。
そこで、事実として友達がいないのか、それとも友達はいるのかを確認したくて、周りからの息子への気持ちと、息子が思う周りからの気持ちを確かめたくて上記の質問をしました。
その答えが以下の通りです。

息子「あ、嬉しかったのが、学級通信で『〇〇な生徒は?』みたいなのを聞いたんだって。そうしたら『勉強できる生徒は?』とか『一生懸命な生徒は?』とかのほとんどで、オラが1位だったんだって」

とのこと。
一安心です。
どうやら、友達は息子のことをちゃんと見てくれていると感じました。

私「えー!そんなに!?そこまで息子のことを見てくれているんだね。すごい!ママは息子に対して、どう接していると感じている?」

息子「あー、以前漢字検定を終わったときに『こうやって何年も自分の好きなことに向き合って、本当にすごいよね』って話してくれた」

これも一安心です。
上記のママの言葉は、私は聞いていませんでした。
どうやら、家族と友達は、息子のことを排除しようとする気持ちはありません。
「そりゃそうだろ」と思っていましたが、本人の言葉から伺い、確認できました。

私「そうだったのか。そうしたら、友達も、息子の努力を見ていて、ママも息子の努力を見ているんだね。ママに関しては、努力を見ているというか、好きなことに熱中する、そのスタンスに関心しているような…。息子自身に対して関心とか尊敬をしているような感じだね」

息子「うん。でも、なんか不安で。今まで勉強してきたから、今休んだりしたら、どうなるのか…。」

私「あー、そうかー。今まで当たり前のように頑張ってきたけど、勉強しなくなったらねー…。」

息子「うん」

しばらく沈黙した後に、私から

私「うーん…難しいけど…。ちょっと目線を変えると、日本って、成績をつけて常に競争をさせる国だよね、とも感じているよ。常に点数をつけられて、そこに優劣が発生して…。一方で、日本ほど勉強をしなくても幸せな人が多い国もあるよね。日本ほどお金も無くて発展していなくても。そして、パパは息子が生まれてきて嬉しいと思っているんだよね。成績が良くても悪くても、いてくれるだけで嬉しい。今すぐは難しくても『自分はいるだけで価値があるよね』って思えたら良いよね。この国では難しいかもしれないけどさ」

息子「(満足そうな様子で)うーん…まぁねー」

と会話をしました。
自分自身が「自分はいるだけで価値がある」と思える境地に達するのは時間がかかると思います。
ですが、この会話の後、表情も柔らかく、落ち着いた様子で勉強を行っていました。
この会話が息子の安心感に繋がれれば幸いです。
また、ここまで読んだ皆さんの周りに、孤独だと感じている人がいた時には、この文章が参考になれば幸いです。

※写真は、息子が友達にバスケットボールのシュートのやり方を伝えている所です。

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藤林 秀
・NPO法人ほほえみの会 就労指導員
・母親と子どもの居場所活動 family café あづま~る代表
・子ども食堂 憩いの広場ここまる 主催チームなないろ副代表
・保育士
・修士(健康科学)